はじめに
僕が手続きをする際にガイドラインや手引きというのはよく読むんですが、条文も一度は読んだことあるけど、あんまり深くまでは考えたことがないな。
という自省も込めて、改めて条文をベースに記事にしてみようと思いました。
今回は、許可を取るためにああしたらいいとか、こうしたらいいとかいう手続き的な話ではなくて、そもそのその手続きの必要性、つまりなんで建設業許可って制度が求められているのかという点を条文から掘ってみようと思います。
極力わかりやすく、読みやすい様に砕けた文体で書きたいと思いますので、どうぞお付き合いください。
条文を見てみる
(目的)
第一条この法律は、建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図ることによつて、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進し、もつて公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。
所謂六法とは異なり、建設業法ような行政の活動を規定する法(行政法令とか言ったりします)には、第一条に【目的】の条文が置かれていることが多いです。
逆に言えば、この一条を読み解くと、この法律が何を目的としているのか、なんでこんな規制を用意したのかという趣旨がハッキリします。
なので、今回の目的である建設業許可を見直すために、まずは第一条を細かくしてみましょう。
これは余談ですが、法律系科目の『行政法』の試験でも使えるテクニックです。
行政法の試験って見たことない行政法令をババンっと出されて、読み解いたうえで、基本法である行政手続法とかとの関係を説明させてくるので、行政法令を読み解けないと詰みます。
それを回避するために、こまったらまず一条の目的規定を読んでみると、解像度が上がります。
条文を分解しながら読んでみる
さて、本題ですが頭から読むより後ろから読んでみましょう。
もつて公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。
「もつて」は「もって」なので、これより前に記された事項を手段として、後ろを行うという意味ですね。
なので、建設業法の最大の目的としては、【公共の福祉の増進に寄与すること】になります。
建設業法が公共の福祉につながる…という点にピンっと来ない方もいらっしゃると思います。
なので、次の事例でイメージしてみましょう。
①僕がYouTubeの動画を見ながら友達と作り上げた橋
②この道10年の建設業者さんが仲間と作り上げた橋
どちらの橋を渡りたいか…まぁ、議論の余地がないですね。
①の橋は危なっかしくて人を乗せるわけにはいかないし、なんならほっといても数か月もすれば崩壊するでしょう。
そして崩壊すれば建築に使った材料が周囲にまき散らされてゴミになりますし、そもそも資源の無駄です。
このように、建築物が建築物としての能力を保持したまま、数十年にわたってちゃんと機能するというのは、当たり前のようではありますが、当たり前であってくれないと色々と不都合が生じます。
それこそ、街中を歩いていたら突如として道路が陥没したとか、橋を渡ってたら崩落しそうになってるとかは、みんな(=公共)の安全(=福祉)が脅かされる事態になるのです。
なので、建築業を営む人に一定の規制をかけることで、その規制をクリアするために建築業者さんの腕前や知識を求めつつ、転じてその腕前と知識によって建築物の安全が保障されることが、公共の福祉にかなうと考えられています。
回りくどいので、ざっくばらんに言ってしまえば「経験も知識もない人が主導で、どんどこ建築物を建てられても世の中が困ったことになるから、それを防ぎたい」という趣旨です。
次の分解に行ってみましょう
~建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進し~
条文の中段に来ました。
この文章から読み取ることは①建設工事の適正な確保し、発注者保護とともに、②建設業の健全な発達の促進を行うと書かれていることです。
少しややっこしいですが、ここに書かれているのは、後に紹介する前段を手段として、その手段が発生させる効果の部分です。この効果を【もって、公共の福祉の増進に寄与する】ということになります。
全体として適正を確保だとか、健全な発達だとかある意味で当たり前というか、適正とは?健全とは?という、ある種哲学めいた記載になっていますが、その中でも明確に「発注者保護」と書かれている点は注目ではないでしょうか。
建設工事を依頼したはいいけど、成果物が不十分であったり構造上の問題があった場合の発注者の損失や社会的経済損失が大きすぎるので、とりわけ発注者保護と記載されています。
住宅やビルの建設を依頼したが、耐震構造に問題があるとかでたら恐ろしいですよね。
しかも、発注者とは基本建築技術に関しては素人も素人なので、何がよくて、何が問題かというのは全く分かりません。こうゆう効果があったらいいねは無限大にありますが、どうすればそうできるかは全くです。
なので、そういった「発注者の無知」を補填するために、建設業者に誠実性を求めている(有していることを必要とする規制を用意する)と読むことができます。
この法律は、建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図ることによつて
さて、最後。最後だけど最初段です。
「~ことによって」という記載なので、この前が手段の部分です。
本条文に示されている手段として①資質の向上②請負契約の適正化③等があげられています。
手段の項目なので、具体的な事例がいくつか上がってきます。
例えば①は工事における主任技術者などの施工体制に関する規制や、大型契約の元請けとなるために必要な特定建設業許可などがあげられます。
「向上」と書いてますが、教育を実施するというより、「ハードルを設定し、そこに到達したものに利を渡す」スタイルで資質の向上を促すといえます。
②は解りやすく18条や19条の規制関係ですね。
(建設工事の請負契約の原則)
第十八条建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基いて公正な契約を締結し、信義に従つて誠実にこれを履行しなければならない。
(建設工事の請負契約の内容)
第十九条建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。
この辺の説明はまた今度とします。
余談ですが、先日大阪会の研修で地方整備局の方が講演にいらっしゃったのですが、この契約書周りは結構まだまだ浸透していないという現状らしく、もう少し力を入れてほしいとのこと。
最後に③の等ですが。まぁ、法律のよくある手です。
後々付け足したり修正が必要になった際に態々法律を国会で改正しなくてもある程度解釈で行けるように余白を残している形。
最近で言えば、CCUS等の「人材のキャリア支援制度」なんかはこれに該当するといえるでしょうか。
まとめ
最後まで走ったので、もう一度最初からつながりを見てみましょう。
まずはじめに手段ですが、これは工事の主任技術者(責任者)になるには、一定の資格を要求するという手段を用いました。
工事の責任者に一定の資格(能力)を要求することは、その工事の成果物について、責任者の技術・知見に基づいた適正なモノであるという保障が生じます。そして、それが発注者の保護につながります。これが効果です。
発注者が保護された(保障された)成果物は、社会が要求する建築物としての一定の性能を備えているといえます。つまり、突然壊れたり機能不全になったりしないということで、社会の理(公共の福祉)に寄与する目的が達成されます。
回りくどい説明でしたが、要は手段⇒効果⇒目的の達成とつながっていないようで、結構つながっているということです。
終わりに~建設業者さんに向けて~
今回は第一条だけに絞って読み解いてみましたが、いかがだったでしょうか。
正直に言えば、しらなくても工事はできると思います。
ただ、ルールってよくわからないまま従わされるより、なんでかっていう納得があった方がちょっとだけ気持ちがいいと思うので、記事にしてみました。
こんな形で、覚えておく必要はないのかもしれないけれど、ちょっとだけすっきりする記事がまた書けたらなと思います。
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