はじめに
関西万博では空飛ぶタクシーが話題になるなど、令和に入ってからモビリティ改革が進んでいます。
他方で、新しい技術が生まれるとどうしても、呼び方や認識について微妙に齟齬が生じます。
特にドローンという単語は、新しい空飛ぶ物体という認識のもと、色々と使われているようにも思います。
そこで、今一度ドローンという言葉が取り巻く環境を簡単におさらいしてみましょう。
定義規定
堅苦しい話かもしれませんが、まずは定義の規定の話から。
ドローンは空を飛ぶ物体なので日本国内法としては原則、航空法に根拠を求めることになります。
航空法はまず、人が乗れる航空機と、人が乗ることができない無人航空機を明確に区別しています。
人が乗れる航空機といえば、旅客機やセスナといった訓練されたパイロットが自ら乗り込んで動かすものというイメージが強いと思います。
飛行機といった方が通りはよいですね。
他方で、無人航空機とはあまり聞きなれない単語ではあると思いますので、まずは航空法の規定から見てみましょう。
引用
この法律において「無人航空機」とは、航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船その他政令で定める機器であつて構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦(プログラムにより自動的に操縦を行うことをいう。)により飛行させることができるもの(その重量その他の事由を勘案してその飛行により航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないものとして国土交通省令で定めるものを除く。)をいう。(航空法2条22項)
少しややこしいので分解してみましょう。
①航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船その他政令で定める機器であつて
②構造上人が乗ることができないもののうち
③遠隔操作又は自動操縦(プログラムにより自動的に操縦を行うことをいう。)により飛行させることができるもの
のうち
④その重量その他の事由を勘案してその飛行により航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないものとして国土交通省令で定めるものを除く。
つまり、①②③にあたりつつ、④にあたらないものが【無人航空機】とされています。
他方、①②③にはあたるけれども、④にもあたるものは【模型航空機】と呼ばれていたりします。
皆さんが思い描くドローンとは、この両方もしくはどちらかであることの方が多いと思います。
無人航空機と模型航空機
無人航空機と模型航空機ですが、単に呼び方が変わるだけ…ではありません。
航空法は無人航空機については規制の対象としており、機体の登録や特定状況での飛行について事前の許可・事後の記録などを求めています。(※ただし、模型航空機であっても、飛行の場所・形態によっては規制対象です)
規制の対象ですから、違反した場合には罰金などの罰則が設けられています。
無人航空機か模型航空機かは、きわめて重要な峻別となります。
では、峻別の方法についてみてみましょう。
先ほどの④には「その重量その他事由を勘案し」とありますので、重量が注目のポイントです。
国土交通省のガイドラインによれば、100g以上の機体が無人航空機にあたるとされています。
尚、この100gとは、本体+バッテリーの重量です。
外付けのカメラなどの外部パーツについては考慮されません。
つまり、飛ばす機体が100gを超える場合には航空法による規制を受けるため、許可が必要な飛行ではないか、検討する必要があるということになります。
社会感覚としてのドローン
無人航空機と模型航空機は法律上異なる取り扱いを受けます。
とはいえ、先にも申しました通り、一般的な感覚で言えば、どちらもドローンと言えてしまうのではないでしょうか。
因みに、僕も感覚的にはどちらもドローンです。
許認可の話をする上で、許可の必要なドローンと峻別する必要はありますが、それでも100g以上・未満のドローンという表現の方がしっくりきます。
他方で、空飛ぶタクシーですが、これについては僕はドローンではないなと思っています。
操縦者の要否に関わらず、人が乗り込む物体は素直に航空機として認識していて、逆に人が乗らない乗れない物体をドローンと呼ぶ方がしっくり来ています。
無人航空機と模型航空機の総称としてのドローンといった棲み分け方をしています。
人が乗る方は、すでに【飛行機】という一般的な代名詞を獲得していますからね。
なので、時々報道記事などで、「人が乗るドローン」という表記を見かけると、少し混乱してしまいます。
おわりに
実利益的な話だけをすれば「100gを超える物体を飛ばす場合には航空法として許可が必要なケースがある」の一言で終わります。
ドローンという単語がどのように使われているかというのは、単なる言葉遊びともいえます。
とはいえ、僕たちの法律や許認可の世界だと、こうした言葉使い一つで複数の理解が生まれる状況というのはうれしくはないです。
現在のドローンの許可といえば、無人航空機の許可ですが、ある日唐突に有人も含まれるようになれば根拠条文が変わってしまいます。
新しい技術は未来があって、気持ちをわくわくさせてくれるので大歓迎ですが、言葉の整理としてどれのことを言っているのかわからなくなってしまうのは正直に勘弁してほしいなと思います。
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