遺言書の作り方(自筆遺言証書の場合)

ここ最近の記事の中で、「遺言書つくるなら公正証書遺言がおすすめ」と繰り返してます。

この意見自体は変わらないのですが、「でもやっぱり自筆で作りたい」という方に向けた記事になります。

それでは始めていきましょう

目次

成立要件を確認する

まずはじめに、法令上の成立要件を確認してみましょう。

第九百六十条 遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。

第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

この条文から遺言をするためには、遺言者が①全文②日付③氏名を自書したうえで、④押印が必要とされています。

なので、究極的には

私のすべての財産を母に譲る 令和7年3月20日 垂井 良太 ㊞

でも、自書していれば遺言書としては成立します。

とはいえ、実際遺言書を残す場合、どれを誰に残すかまで書きたいものです。

ところが、実際財産の分配迄書こうとすると、財産の名目を、銀行名や支店名口座番号や、不動産の登記情報、自動車の車台番号等、財産を明確にするために事細やかに書く必要があるため、遺言書が書きにくくなります。

そこで2項を使います。

2項は【財産の目録】については、自書を要しない。つまり、パソコンで打ち込んでも大丈夫となっています。

なので

私の財産の内、別紙財産目録1にある財産を母に、別紙財産目録2にある財産を弟に相続させる。

という、表記ができます。
なお、財産目録の書き方について詳細は別としますが、先ほどの注意と同じく預金であれば銀行名や口座番号、不動産であれば不動産登記に記された情報等を元に、正確に記す必要があります。
(端的には、他人の財産を含めた他の財産と疑いなく区分できる程度に記載する必要があります)

ここまでは、「書き方」のお話しですが、次が結構問題になる部分です

無効と戦う

ここまで頑張って調べたのに、無効事由を作ってしまうとそれは無効として扱います。

なんか、どっかの二世議員の構文みたいですね、無効事由を作ったから無効…

さておいて、無効事由には法定されたものから、ちょっとやっちゃったみたいなものまでありますので、典型的な例をご紹介しておきましょう

  • 誤字脱字の修正方法を間違える
  • 筆記介助があった
  • 共同遺言にしてしまった

・誤字脱字の修正方法を間違える

これは結構ありがちです。

先の法令の3項をもう一度見てみましょう

第九百六十八条 
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

どうでしょう、修正をする場合は単に二重線で消して書いてだけではいけません。
変更した旨を付記して、署名し、訂正の印が必要とあります。

正直に言いましょう。めんどくさくないですか?
しかも、訂正の方法を間違えたら、無効になります。

なので、書き損じたら【一から全部書く】ことがおすすめです。
結構気合がいりますよ。

・筆記介助について

法令上「自書」とありますので、誰かが代筆することは当然認められていません。
加えて、ペンを支えるといった介助も認められていないというのが、現行法の解釈です。

結構お年を召した方ですと、ペンを握る手もつらいとお伺いしますが、それでもだめです。

逆に言うと、「あのころの母はペンも持てなかったのに」と思われると、それこそ遺言の成立を争うきっかけになるわけです。

ペンが握れないのであれば、公正証書を検討しましょう。

・共同遺言について

実は、意外と落とし穴になるのが共同遺言。

夫婦の仲がよかったりする場合に、一括して遺言書にしてしまう方がいらっしゃいます。

実はこれ、明確に法令で禁止されてます。

(共同遺言の禁止)
第九百七十五条 遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。

なので、どれだけ夫婦の仲がよかろうとも、遺言書は別々にしましょう。

あれ・・・封は?

ここまでお読みになった方で、違和感がある方はいらっしゃいますか?

そう、実は【封をする】は法定の成立要件ではありません。

なので、裸で管理していても、遺言書としてはちゃんと成立します。

しかし、他人による書き換えの防止や内容発見による家族間緊張を未然に防ぐ観点から【封をすること】がある種のお作法として広く浸透しています。
尚、封がされている場合、それを裁判所による検認の前に開封すると刑事罰です。注意しましょう。

とはいえ、実は「遺言書保管制度」の誕生により、そもそも封をするとかそうゆうはなしではなくなった感じはあります。詳しくは次へ行きましょう

「無くした!」は昔の話?

自筆証書遺言書にとって最大の敵は無効事由ともう一つありました。

それが、「紛失」です。

遺言者がどこに保管したのか、遺族が知らない場合、遺言が発見されないままであったり、せっかく作ったのに、どこに保管したか忘れてしまうことがままあったと聞いています。

しかし、それも過去の話と言っていいかもしれません。

現在では、法務局が遺言書を預かってくれます。

遺言書保管制度というものです。

書面に関して、一定の制限(余白等の指定等)がありますが、作成したものを無くすという本末転倒な結末からはこれで救われます。

また、内容の改変防止にもなりますので、先の【封】の話も、この制度を利用すると一旦は解決になると思います。

しかもこの制度、予約など一定の手間はかかりますが、なんと無料で受けれます。

自筆で遺言書を作成するのであれば、この制度は利用しない手はないでしょう。

まとめ:便利な制度は利用し得

駆け足になりましたが、以上になります。

要点的には、①法令上の成立要件と無効事由はしっかり確認しましょう②遺言書保管制度は利用し得なので、利用しましょう。

個人的に一番面倒だと感じるのは「書き直し」でしょうか。

加除筆の様式を確認するところからになるので、いっそ全部書き直しをおススメしてますが、それにしたって面倒で張ると思います。

その辺も踏まえて、自筆で遺言書を残すのかどうかの判断にしていただければと思います。

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