交流会などに顔を出した際に、一番もらう質問の中に
「行政書士さんって何をするひとなんですか?」
という質問をたくさんいただきますので、解説したいと思います。
とてもざっくりみる「やわめ」とそこから少し深堀する「かため」にわけて解説します
やわめ
行政書士は一言で言えば書類を作るお仕事をしています。
沢山ある書類の中でも、①行政に出す書類と②自分の権利義務に関わる書類について作成します。
- ①行政に出す書類
一番身近なのは警察署にだす車庫証明だと思います。
ほかには事業を営む方であれば、自身の事業に関する許認可、例えば建設業の許可や飲食店の営業許可などの許認可取得のための書類作成も行政書士のお仕事です。
また、外国人を雇用する際の入国手続きのサポートも行います。
近年では、コロナに対する給付金の申請についても手続きがありました。
- ②自分の権利義務に関わる書類
有名なところは、遺言書・遺産分割協議書・契約書などです。
書類作成にむけて、相続人を調査し、必要な連絡を取り付けたりもします。
- まとめ
業務数が多いので、認知度が高い代表的なものを例示で上げましたが、このほかにも業務として扱われているものがあります。
詳しくは、各行政書士さんに、何の業務を取り扱っているか確認してください。
かため
- 参照法令の確認
かためなので、まずは法令の引用から始めてみます
(業務)
第一条の二 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=326AC1000000004
物々しく書いていますが、要点は「やわめ」で解説した通りです
①官公署に提出する書類②権利義務又は事実証明に関する書類 を作ることができます。
ですが、問題は次の第2項にあります。
2 行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。
「やわめ」と分けたのはこの条文を紹介するためです。
簡単に読めば、行政書士であっても作ってはいけない書類が存在するということです。
- 士業法と作ることができない書類
では、どのような書類は作ることができないのか。
条文に記されている他の法律とは、他の士業法が主に該当します。
士業法という言葉自体聞きなれない単語だともいます。
士業法とは〇〇士について、その使命や業務の範囲、名乗るため(登録)に必要な条件などを規定した法律の呼び方です。業法と呼ぶこともあります。
弁護士法や司法書士法、税理士法など様々な国家資格士にはこうした士業法が存在します。
先に引用したのも、行政書士法という行政書士に関する士業法です。
士業法には、業務の範囲が規定されていますが、そのうちのいくつかは、その士業にしか行うことができない業務になります。
この、その士業にしかできない業務を独占業務と呼びます。
少し品のない表現ですが、平たく言えばナワバリです。
行政書士法の書き方の問題でもあるのですが、引用の通り、書類作成という大風呂敷を広げた後に、コレコレは除くという表現をされているので、何ができるかよりも何ができないかという表現の方が説明としては適切になる場合があります。
これが行政書士の業務を説明しにくくしています。
- 行政書士ができない業務の一例
身近にある行政書士ができない業務について他の士業との関係で説明しますと。
・権利義務の書類作成であっても、紛争については関与できない。
訴訟などの争いごとは弁護士さんの独占なので、関与できません。
遺産分割協議書などは、遺族間で内容に争いがある場合は関与できません。
・不動産・会社登記をあげることはできない。
登記をあげるのは司法書士さんの独占なので、行政書士はできません。
(不動産については土地家屋調査士さんも司法書士さんと共同で独占しています)
・税務に関する申告は原則できない。
税金関係は税理士さんの独占業務です。
原則と表現したのは、自動車税等一部税申告については行政書士もできるのですが、細かくなるので割愛します。
・労災保険など、社会保険関係の業務はできない。
社労士さんの独占業務になります。
尚、行政書士のうち1980年8月末までに登録された方は、この業務ができます。
・特許出願書類は作成できない。
弁理士さんの独占業務です。
その他、建築士さんや海事代理士さんとの関係でも作ることができない書類は存在します。
細々とできないことを並べてみましたが、おおざっぱな理解としては①他人の争いに介入することはできない②官公署庁のうち、法務省・税務署・厚生労働省・特許庁等に提出する書類はできないものが多いことを覚えていただければ幸いです。
おわりに
実際のところ、お話を頂く段階で依頼者の方が「この書類作成は行政書士ができる(できない)」を判断することは困難を極めると思います。
ですので、書類を作る必要があるから相談したいと感じたときに相談するべきは、身近な士業さんで大丈夫です。
相談に合わせて、必要な士業さんを紹介してくれます。
ただ一点お願いがあるとすれば、法律的にできない業務を依頼することがない様にだけ。
費用の節約…と思われるかもしれませんが、ご自身の事業はそんなアマチュアに任せるような軽いものではないとおもいますので。
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