建設業を営んでいると、職人さんや協力業者さんとの契約をどう結ぶかが重要になります。「雇用契約」「委任契約」「請負契約」という言葉を聞いたことがあると思いますが、実際に違いを意識して契約していますか?
今回は、この3つの契約形態の違いと、それぞれの契約を選ぶ際の注意点について解説します。
目次
1. 雇用契約とは?
雇用契約は、会社(雇用主)が労働者を雇い、労働者が指揮命令のもとで働く契約です。
特徴
- 指揮命令ができる(業務の指示が可能)
- 給与を支払う(時間や労働日数に応じた報酬)
- 社会保険・労働保険の適用あり(雇用主の負担義務)
- 労働基準法が適用される(最低賃金、労働時間の制約あり)
こんなときに適用
「職人さんを現場に常時配置し、会社の指示に従って働いてもらう場合」は、雇用契約が適切です。
2. 委任契約とは?
委任契約は、特定の業務を依頼する契約ですが、「成果物の完成」を目的としません。
特徴
- 成果ではなく業務の遂行を依頼(たとえば「設計コンサル」など)
- 指揮命令はできない(独立した立場で業務を遂行)
- 報酬は業務の遂行に対して支払われる
- 労働法の適用なし(労働者ではなく、個人事業主として扱われる)
こんなときに適用
「設計士やコンサルタントに業務を委託する場合」など、特定の仕事を遂行してもらう契約が委任契約にあたります。
3. 請負契約とは?
請負契約は、「成果物の完成」を目的とした契約です。
特徴
- 完成した成果物を納品する(建物、工事、修理など)
- 指揮命令はできない(作業の進め方は請負人の裁量)
- 報酬は成果物に対して支払われる(成果が完成しないと報酬は発生しない)
- 瑕疵担保責任がある(完成物に欠陥があれば責任を負う)
こんなときに適用
「外注業者に工事の一部を任せる場合」や「職人に特定の施工を依頼する場合」は、請負契約となります。
4. 「偽装請負」に注意!
建設業界では、雇用契約と請負契約の区別が曖昧になりやすい問題があります。特に「偽装請負」には注意が必要です。
偽装請負とは? 本来は「請負契約」であるべきなのに、実際には発注者が直接指揮命令をしている状態のことを指します。これは違法となり、労働基準法の適用を受ける可能性があります。
例えば、
- 会社が職人に「請負契約」として発注したのに、実際には会社の社員と同じように指示を出して働かせる
- 報酬の支払いが「作業時間」ベースになっている(請負なら成果物に対する支払いが基本)
こうしたケースでは、労働基準監督署の調査で「偽装請負」と判断され、雇用契約とみなされることがあります。
5. まとめ
「雇用」「委任」「請負」の違いを理解し、適切な契約を結ぶことが重要です。
雇用契約 | 委任契約 | 請負契約 | |
---|---|---|---|
指揮命令 | あり | なし | なし |
目的 | 労働力の提供 | 業務の遂行 | 成果物の完成 |
報酬 | 時間・労働量に対して支払い | 業務遂行に対して支払い | 成果物の完成に対して支払い |
社会保険 | あり | なし | なし |
労働法適用 | あり | なし | なし |
契約の種類を誤ると、思わぬトラブルや法的リスクを招くことがあります。特に建設業では「偽装請負」のリスクに注意が必要です。
適切な契約を結び、リスクを回避しながら事業を進めましょう!
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